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2021年1月号

『認知症と難聴』 -Part I-

認知症と難聴のトピックは2回に分けてお届けします。

近年、難聴が認知症を引き起こす要因になるという研究データが各方面から報告されてきています。WHO(世界保健機関)においても認知症のリスクを減らすことは最重要課題であるとして、難聴に関する理解と予防策などについてもアナウンスされるようになってきました。国内におきましては、厚生労働省から「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」として認知症対策が打ち出されています。その中でリスク要因として「難聴」があげられており、 難聴は聞こえない不自由さだけではない、とても重要な障害であると云えるでしょう。
改めてこの「認知症と難聴」について、現在の市場の動きや最新研究データなどについてご紹介したいと思います。今回は、認知症に関する国内の動きについてご紹介します。皆様にこの関係性をご理解して頂き、私たちの業界の信条でもある「難聴者への適切なケア」の意義を深めて頂ければ幸いです。

 

【1】認知症に関する国内の動き

国内では厚生労働省から「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が平成27年1月に発表されています。
この主旨は、

【主旨】
認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指すための指針。
とされています。

その背景には、「わが国の認知症高齢者の数は、2012(平成24)年で462 万人と推計されており、2025(平成37)年には約700 万人、65 歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが見込まれています。今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気である」という深刻な状況があるからです。

この中では、次のような項目別に認知症に関する詳細な知識と様々な情報が盛り込まれています。

厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」は以下リンクよりご覧になれます。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/kaitei_orangeplan_gaiyou.pdf

 

■ 新オレンジプランで示されたこと

 新オレンジプランでは、次の7つの項目ごとに具体的な解説が書かれています。
① 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
② 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
③ 若年性認知症施策の強化
④ 認知症の人の介護者への支援
⑤ 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
⑥ 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
⑦ 認知症の人やその家族の視点の重視

この中の②の項目中において、認知症にかかるリスクの高い因子が示されています。

 

【2】発症予防の推進

加齢、遺伝性のもの、高血圧、糖尿病、喫煙、頭部外傷、難聴 等が認知症の危険因子、運動、食事、余暇活動、社会的参加、認知訓練、活発な精神活動等が認知症の防御因子として、7つの危険因子の1つに「難聴」が取り上げられています。

これまで、医学的に身体の異変や疾患によって難聴が誘発されたり、後遺症として難聴が残ることは紹介されてきましたが、難聴によって他の病気になる、あるいはその可能性が高いとされるような情報はあまり述べられてきませんでした。ここが大きなポイントであり、しかも国の厚生労働省から発信されたことは社会的に大きな意義があります。

 

こうした動きの中、平成29年1月に日本耳鼻咽喉科学会が主催して「健康寿命の延伸 ~認知症・うつ病と難聴の関係について~(大会長:小川 郁先生)」というテーマで国際シンポジウムが開催されました。

この国際シンポジウムの様子は下記のサイトでご覧いただけますので、ご興味のある方は是非アクセスしてみてください。
http://www.jibika.or.jp/members/video/index.html

 

今回は、「認知症と難聴」に関する国内の動きについてご紹介をしました。次回のオーディオロジーニュースでは 『認知症と難聴』-Part Ⅱ-として、根拠となる研究や様々な情報についてご紹介をさせて頂きます。